研究概要 |
アブラナ科植物の自家不和合性因子であるレセプターキナーゼSRKと相互作用する蛋白質のcDNAをクローニングするために,Brassica campestris S9/S9ホモ個体の柱頭のmRNAからcDNAを合成し,λGEXファージベクターに導入して,発現型のcDNAライブラリーを作製した。スクリーニング法としては,固相リン酸化法を用い,IPTG誘導後のプラークを転写したニトロセルロース膜上でGST-KDと^<32>P-ATPを用いてリン酸化反応を行い,オートラジオグラフィーにより陽性クローンを同定した。この方法による陽性クローンの産物としては,GST-KDによりリン酸化される蛋白質または自己リン酸化能を有する蛋白質のいずれかの可能性があった。 合計20,000クローンについてスクリーニングした結果,2種のcDNAクローン(♯93および♯143)が純化され,cDNAの塩基配列を決定したところ,いずれもヌクレオシド2リン酸キナーゼ(NDPK)との相同性が認められたが,2種は同一の酵素ではなく,互いにアミノ酸レベルで60%の相同性を有する別の酵素であった。これら2種の酵素のうち,Bc-NDPK3型はin vitroのアッセイ系で自己リン酸化を示すとともに,組換え型SRKのキナーゼドメイン(GST-KD)のリン酸化をも顕著に促進したが,Bc-NDPK4型は促進しなかった.NDPKは多機能蛋白質として,細胞分化や光受容シグナル伝達系に関与していることが報告されている。このキナーゼがin vivoで自家不和合性のシグナルを伝達経路に関与しているかについては今後の課題として残された。
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