研究概要 |
出芽酵母の染色体DNA複製に必須なDNAポリメラーゼII(ε)(Pol II)と相互作用するDPB11の温度感受性変異株は、非許容温度下で染色体DNA複製とS期のチェックポイント機構が異常で、核が不均等に娘細胞に分配されて行く。この核の不均等分配の原因を調べるため、CHIP(Chromatin Immunoprecipitation)法によりDpb11,PolII,プライマーゼのクロマチンへの結合を調べた。その結果、Dpb11はPolIIとほぼ同時期に複製開始点に結合し、PolII及びプライマーゼの複製開始点への結合に関与していることがわかった。 染色体上の複数の複製開始点はそれぞれS期の異なる時期に使われるが、ヒドロキシ尿素で複製を阻害するとS期初期に使われる開始点のみに複製酵素は結合する。しかし、S期チェックポイントに欠損を持つrad53変異では、S期後期に使われる開始点にも初期のもの同様に複製酵素が結合するため、この複製開始点活性化の制御が、S期チェックポイントコントロールの1つであると考えられている。そこで、dpb11-1変異でPolII,プライマーゼの複製開始点への結合をヒドロキシ尿素存在下で調べると、PolIIもプライマーゼも初期及び後期の複製開始点に結合していた。これらのことは、Dpb11が複製開始点の制御に重要な働きをし、この制御を介してS期チェックポイントに関与していることを示唆するものである。dpb11-1変異ではこの制御系が壊れ、さらに下流に位置する細胞分裂装置までシグナルが伝達されていないために核の不均等分配が起こると思われる。
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