研究概要 |
種々のステージにある減数分裂細胞の大量調製が比較的容易なテッポウユリを材料に、高等植物の減数分裂時に発現する遺伝子の同定とその特徴付けを通して、雄性生殖細胞(花粉)の形成過程とその制御の分子基盤を解明することを目的とし、以下のような研究を行った。 (1) テッポウユリ花粉母細胞の減数第一分裂前期に特異的に発現するLIM遺伝子産物に対する抗体を作成し、そのタンパクレベルでの発現様式と細胞内所在を検討してきた。現在までに、LIM4,LIM5,LIM8,LIM9,LIM10,LIM13,LIM14,LIM15,LIM16,LIMl7,LIM18に対する抗血清の作成を終了した。今年度は、LIM14に関する次のような進展がみられた。LIM14は、1)葯特異的に発現するグリシンとセリン残基に富む新規タンパク質である、2)減数分裂時には朽壁の細胞に、減数分裂後には未成熟花粉に検出され、その蓄積する細胞は雄性生殖細胞の形成過程進行に伴って変化する、3)これら細胞内に蓄積するデンプン粒に局在することから、LIM14は雄性生殖細胞の形成過程に起こる一過的なデンプン粒の形成あるいは貯蔵に関わる機能が示唆された。 (2) イネとシロイヌナズナから、LIM7,LIM8,LIM14,LIMl6,LIM17相同遺伝子のcDNAおよびゲノムDNAを単離し、RT-PCR法で発現様式を明らかにした。 (3) ザイゴテン期の花粉母細胞由来のcDNAの大量シークエンスを進めた結果、生殖細胞形民の進行の制御に関与することが予想される新規なタンパクキナーゼ、転写因子、核タンパクをコードしているcDNAが単離できた。
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