研究概要 |
本研究は,カイコの非休眠卵を用いてミクロソーム型電子伝達系を構成しているNADPHチトクロームP450還元酵素とエクジソン20-水酸化酵素の遺伝子を単離し,これらの酵素の発現パターンからカイコ卵における20-ヒドロキシエクジソンの生合成機構を解析しようとするものである. (1) NADPHチトクロームP450還元酵素遺伝子の単離:すでに知られている昆虫のNADPHチトクロームP450還元酵素遺伝子の保存された塩基配列を基にしてRT-PCR法によりcDNA断片を得た.さらに,これをプローブとしてcDNAライブラリーのスクリーニングを行い,得られたクローンの塩基配列を決定した.現在,この配列の一部をpET28ベクターを用いて大腸菌に組み込み,目的蚕白質を発現させ,その蛋白質のポリクローナル抗体を作製中である. (2) エクジソン20-水酸化酵素の遺伝子の単離:エクジステロイド誘導性細胞(EcR293細胞)のエクジステロイド応答配列の下流にルシフェラーゼをコードする遺伝子を導入した.このような細胞の中から,20-ヒドロキシエクジステロイド誘導/非誘導値が1000倍以上のものを単離し株化した(LucEcR293細胞と命名).LucEcR293細胞の各種エクジステロイドに対する反応性を調べた結果,25-デオキシエクジソンには反応しないが25-デオキシ-20ヒドロキシエクジソンには濃度依存的に反応することが明かとなった.現在,非休眠卵より調製したcDNAフラグメントをほ乳類発現ベクターpSV-SPORTに組み込み,NADPHチトクロームP450還元酵素遺伝子と共にLucEcR293細胞に導入し,25-デオキシエクジソンの存在下でルシフェラーゼアッセイを行うことにより,エクジソン(25-デオキシエクジソン)20-水酸化酵素遺伝子のスクリーニングを行っている.
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