研究概要 |
食道下体には食道下体細胞と脂肪体細胞の2種類の細胞が混在していて,食道下体細胞だけを材料として用いることは困難である。そこで,食道下体と脂肪体の水溶性タンパク質をそれぞれ回収し,トリシンSDS-電気泳動とHPLCを用いて解析した。タンパク質の泳動パターンおよび溶離パターンをそれぞれ比較した。トリシンSDS-電気泳動の結果,14.8kDaと27kDaの移動度に、食道下体にのみ存在するバンドを確認した。この結果から,14.8kDaと27kDaの移動度のバンドに相当するタンパク質をそれぞれ食道下体に特異的タンパク質p14.8、p27として同定した。また、このp14.8とp27は4眠期に比較的多く蓄積することが示された。HPLCの結果,脂肪体では検出されず食道下体で高く検出されるピークを得た。このピークのタンパク質構成をトリシンSDS-電気泳動で分析したところ,14.8kDaの移動度に主要なバンドを確認した。 p14.8のタンパク質のN末端アミノ酸部分配列をシークエンサーで分析した結果、p14.8のN末端アミノ酸部分配列は昆虫リゾチームと相同性が高いことがわかった。特にカイコのリゾチームとは90%の相同性があった。p14.8がカイコのリゾチームと同一の物質の場合、食道下体は脂肪体よりもリゾチームを高濃度に蓄積している器官だと推測される。今後昆虫リゾチーム様物質がなぜ食道下体に蓄積するのか,様々な分子・細胞生物学的方法を用いて解析する。
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