研究概要 |
人は、両眼視差をもとに、2次元網膜像から3次元面構造を復元する。2次元画像から立体構造を求めることは典型的な不良設定問題であり、本来ならば解は一つに定まらない。しかし、脳は、情報として不十分な網膜像から、その網膜像を与えうる可能性の最も高い面構造一つを復元する。Nakayama&Shimojo(Science,257:1357-1363,1992)は、ヒトの知覚心理実験から、一般像抽出原則(ある2次元網膜像を投影する3次元面構造が複数存在する時、視覚系は、その像を一般的に生じるような3次元面構造を再構築する)を提唱し、ヒトの面構造復元を説明した。一般像抽出原則を実現する神経機構の解析には、サルを用いた生理学的実験が必須である。われわれは、その出発として、サルを用いた行動実験を行い、サルが、水平腕の両端に視差をつけた十字を2本の重なったバーとして知覚すること、Redies-Spillmann図形において、ネオン色拡散を知覚していることを示した。これらの結果は、1)サルが面を知覚していること、2)面の知覚の際に、一般像抽出原則で予測される面構造を復元していることを示唆している。
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