研究概要 |
脳神経系におけるニューロンのアポトーシスは、非分裂細胞にとって、その死が置き換えがきかないことからも重要なものと考えられている。特に、疾患あるいは障害によって生じるアポトーシスは、脳神経系における機能に重大な影響を及ぼすものと考えられる。私達は分散培養した小脳顆粒細胞を用いてDNA鎖切断傷害で生じるアポトーシスに、がん抑制遺伝子p53が関わっていることを明らかにしてきた。今年度は、ヌクレオチド除去修復関連遺伝子がニューロンのアポトーシスにどのように関与するかを調べるため、ヌクレオチド除去修復機構に欠損を持つヒトの遺伝病、色素性乾皮症(Xeroderma pigmentosum:XP)やコケイン症候群(Cockayne syndrome:CS)の原因遺伝子の一つであるXPA遺伝子やCSB遺伝子を欠損したマウスの培養小脳顆粒細胞を用い、DNAに損傷を与える様々な刺激(UV,γ線,H_2O_2)が各遺伝子型ニューロンのアポトーシスに及ぼす効果を調べた。その結果、UVによるDNA損傷に対しては、XPA遺伝子および、CSB遺伝子欠損マウスともに、野生型マウスと比べ培養ニューロンにおける細胞死がより促進された。この結果はすでに報告されているXPA遺伝子と同様CSB遺伝子も、中枢神経系のヌクレオチド除去修復機構において重要な役割を持つことを示している。またXPA、CSB蛋白質の欠失によるヌクレオチド除去修復欠損に起因して、ニューロン死を促進する何らかのシグナルが出される可能性を強く示唆するものである。
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