研究概要 |
熱帯熱マラリア原虫感染赤血球による宿主血管の閉塞のメカニズムを解明する目的で、ヒト熱帯熱マラリア原虫感染モデル動物として確立されているPlasmodium coatneyi感染ニホンザル(Macaca fuscata)の感染赤血球を用いて、静的及び動的状態での接着の動態を解析した。 1. 静的状態でのマラリア原虫感染赤血球の接着の動態の解析 ICAM-1,CD31,E-,P-selectinの各トランスフェクタント、CD36を発現しているC32細胞をシャーレの中で単層に培養し、その上にP.coatneyi原虫感染赤血球を載せ1時間振盪培養の後、接着を観察した。C32細胞には強く接着することが観察されたが他のトランスフェクタントでは接着が見られなかった。 2. 動的状態でのマラリア原虫感染赤血球の接着の動態の解析 我々の樹立した血流モデルを用いて、毛細管内面を各トランスフェクタント、C32細胞あるいはVCAM-1,E-,P-selectinの各可溶性蛋白で被覆し、P.coatneyi原虫感染赤血球の接着の動態を流速を変化させ、それに応じて接着の状態がどのように変化するか、またどのような接着分子が関与するかを検討した。P.coatneyi原虫感染赤血球は、C32細胞、ICAM-1トランスフェクタント、VCAM-1蛋白は1.0〜1.5dyne/cm^2の低流速において接着およびRolling現象が観察された。他のトランスフェクタントや蛋白では低流速の条件下においてもRolling現象は観察されなかった。 3. マラリア原虫感染赤血球上に発現する接着を担うリガンドの解析 P.coatneyi原虫感染赤血球上に発現する、接着現象を担うリガンドをコードするマラリアの遺伝子を解析するために、PfEMP-1に存在するDBLドメインをコードする遺伝子を取り出し、解析を始めている。
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