研究概要 |
P.yoelii 17XNL非致死株及びP.berghei NK65株赤内型をBALB/cマウスへ各々感染させ、パラシテミアが約20%、30%、40%、50%に達した時点で、マウスより麻酔下で心臓採血を行ないマラリア感染赤血球を分離した。対照として、非感染マウスより同様の手技により赤血球を分離した。分離した赤血球は、洗浄後GIT培地(和光純薬)へヘマトクリット10%になるように懸濁し、24穴のカルチャープレートへ1mlずつ分注、インキュベーター内で一晩培養した。翌日培養液を回収し、L929細胞を用いたTNF生物学的アッセイへ供した。 リコンビナントTNFα(rTNFα)を含んだGIT培地と回収培養液を混合後、L929細胞を一層に増殖させた96穴カルチャープレート上で二倍希釈系列を作製した。培養18時間後にrTNFαのL929細胞への細胞毒性を判定した。 その結果、異なるマラリア原虫感染率を示す全ての赤血球培養液が、TNF抑制効果を有する事が明らかとなり、原虫感染率が上昇する程その効果が増強される傾向が認められた。この抑制効果は、P.yoelii及びP.berghei感染赤血球培養液双方に観察され、非感染赤血球培養液には全く認められなかった。マウスより分離した感染率約50%の赤血球を、27℃インキュベーター(気相は大気)で一晩置いた培養液の抑制効果は、マルチガスコントロールインキュベーター(CO_25%,O_25%)内培養液に比べ劣る傾向が認められ、マラリア感染赤血球を4℃冷蔵庫(気相は大気)に一晩置いた培養液では、TNF抑制効果は認められなかった。 尚、GIT培地にてヘマトクリット3%、マラリア感染率約10%で一晩培養したP.falciparum FCR3株の培養液はTNF活性抑制作用を有さず、ヘマトクリットを20%にまで引き上げて培養を施行してもその培養液にTNF活性抑制効果を検出する事が出来なかった。 以上の結果は、マラリア感染赤血球培養液にTNFの生物学的活性を抑制する作用があり、その抑制効果発現にマラリア原虫の代謝が必要である事を示唆していると考えられた。今後このTNF活性の抑制因子同定を目指してさらに本現象を検討して行く予定である。
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