研究概要 |
最近、我々は沖縄産Acanthella属海綿から強力な抗マラリア活性を有するkalihinolAを単離した。本年度は、Acanthella属海綿及びその他の海綿よりkalihinol関連化合物あるいはその他の化合物の単離構造決定を行い、それらの抗マラリア活性を検討する。さらに、抗マラリア活性を有するkalihinolAの合成を目指し、kalihinolAを合成する上で最も重要なデカリン部の構築法を確立する。 沖縄県石垣島近海で採集したAcalithella属及びHalichondria属(推定)海綿から、新規及び既知化合物を合計14種単離構造決定した。これら化合物及びその誘導体の熱帯熱マラリア原虫に対する抗マラリア活性及び宿主モデルを用いた選択毒性比を検討した(岡山大・綿矢教授に依頼)。これらのうちkalihinol A,kalihinolE及びkalihinol A acetateは培養熱帯熱マラリア原虫に対し、それぞれEC_<50>1.2x10^<-9>M,6.8x10^<-9>M及び3.5x10^<-8>Mの強力な抗マラリア活性を示し、宿主モデルFM3A細胞に対する選択毒性比はそれぞれ317,191及び151であることが明かとなった。 さらに、kalihinolAの合成を目指し検討を行った。ゲラニオールを出発原料に用い不斉ジヒドロキシル化等を行うことにより、光学活性なエポキシドを合成した。エポキシドに対する位置選択的なアルキルスルホンの付加を行った後、Wittig反応等を行いトリエンを合成した。このトリエンは、室温で分子内Diels-Alder反応が立体選択的に進行し、kalihinolAのデカリン部に相当する化合物が得られた。以上のように、kalihinolAの炭素骨格の構築上、最も重要なデカリン部の構築法を確立することができた。現在、デカリン化合物よりkalihinol Aの合成を検討中である。
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