研究概要 |
1) マボヤ補体成分のクローン化と構造解析:既に報告している2種類のMASPに加えてC3の全構造を決定することにより、マボヤ補体が少なくとも3成分からなる系であることを明らかにした。マボヤC3はα-βの鎖構造やチオエステル結合など、脊椎動物C3の基本構造をよく保存していたが、C3転換酵素による切断活性化を受ける部位はかなり構造が異なっており、脊椎動物とは別の活性化酵素が働いている可能性が示唆された。また、マボヤ体腔液で処理することにより、血球細胞による酵母の貪食が促進されるが、マボヤC3に対する抗体はこの貪食促進作用を阻害し、C3がオプソニンとして働いていることが示された。 2) メダカMHCの構造解析:これまでにメダカMHCは多くの染色体に分散して存在し、両生類以上では連鎖の保たれているクラスI,II,III領域が別々の染色体上に分かれて存在することが示され、LMP2,LMP7間でのみ連鎖が確認されていた。今年度はTAP2のクローン化を行い、LMP2,LMP7と連鎖することを明らかにした。また、クラスIA遺伝子もこれらと連鎖していることを示す予備的な結果を得ており、MHCの中核をなすのはクラスIAとその抗原の提示過程に関与する遺伝子群であることが強く示唆された。また、C4と2種類のC3クローンを単離、解析した。2種類のC3はその一次構造からチオエステル結合の反応性に差があることが示唆され、獲得免疫系が未発達な硬骨魚においては、補体系が生体防御に、より積極的な役割を果たしている可能性が示された。2種類のC3遺伝子は連鎖しており、縦列遺伝子重複の産物と考えられた。しかしながら、C3,C4及び以前解析されたB因子遺伝子の間には連鎖は認められず、硬骨魚にはMHCクラスIII補体領域は存在しないものと思われた。
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