研究概要 |
自己と非自己の識別は免疫系の中枢であり、この識別を誤ると自己の組織を攻撃する自己免疫応答が誘導される。T細胞の抗原認識はT細胞レセブター(TCR)とペプチド/MHCの相互作用によって行われる。本研究は、T細胞レセプターがペブチド/MHCの微妙な構造変化をどこまで識別し、自己と非自己を見分けることができるか、その限界を既知ペプチドを発現させたトランスジェニックモデルを用いて追求し、自己免疫疾患の分子機構を解明することを目指している。 我々はmothcytochrome c(MCC)_<88-103>および、そのTCRの認識部位99位,102位をグルタミン酸(E)に変換した変異ペプチド99E,102Eをインバリアント鎖とのキメラ分子として発現するトランスジェニックマウスを確立した。これらのマウスを種々の変異ペプチドで免疫して発現ペプチドによるトレランスの誘導能力について検討を行った。その結果マウスで発現させた特異的ペブチドはTCRの認識部位である99位、102位のどちらか一方が異なる抗原ペブチドに対する免疫応答を抑制することが明らかになった。MCC_<88-103>特異的なT細胞をマウスに誘導し99E,102Eに対する反応をみると交叉性が乏しいが、逆に99E,102Eで誘導されたT細胞に対しMCC_<88-103>は低濃度でT細胞の分裂を誘導し高濃度では抑制的に働いた。このことはMCC_<88-103>を発現したマウスでは99E, 102E特異的なT細胞をネガティブセレクションする可能性は高いが99E、102Eを発現させてもMCC_<88-103>特異的なT細胞はネガティブセレクションせれる確立は低いことを意味している。このことから99E,102Eを発現しているトランスジェニックマウスの末梢でMCC_<88-103>特異的T細胞は不応答化していることが示唆され今後、この不応答化の機構を解析する予定である。
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