研究課題/領域番号 |
10167228
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | (財)東京都臨床医学総合研究所 |
研究代表者 |
芝崎 太 財団法人東京都臨床医学総合研究所, 微生物研究部門, 研究員 (90300954)
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研究分担者 |
大森 信彦 財団法人東京都臨床医学総合研究所, 微生物研究部門, 研究員 (80311421)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1998年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | カルシニューリン / NF-AT / casein kinase I / MEKKI / nPKC / NF-ATキナーゼ / 核移行 / NLS |
研究概要 |
1) NF-ATキナーゼの同定:NF-ATは静止時の細胞においてはN-端半分のserine clusterがリン酸化され、キナーゼがこれらの部位をターゲットしていることが予想されたため、GST-NFAT-N端の融合蛋白を大腸菌にて発現させ、アフィニティーカラムを作製した。HeLa細胞のl%TritonX-100抽出分画を用いて、このカラムにて結合するキナーゼを精製し、アミノ酸分析の結果、それぞれprotein ki-naseC(PKC)ηおよびcasein kinase Iα(CKI)であることが判明した。さらにMAPK系の各キナーゼの恒常活性型変異体を用いて、NF-ATの核内移行阻害活性を調べたところ、MEKKIが最も強く、NF-ATキナーゼの1つであることが判明した。 2) CKIとMEKKIによるNF-ATの調節機序:NF-ATキナーゼとして同定されたPKCη、CKIα、MEKKlの遺伝子を発現ベクターに組み込みBHK細胞にて解析を行った。 CKI、MEKKIはNF-ATを直接リン酸化したが、興味深いことにまず、MEKKIがN-端にあるA domainのserineをリン酸化した後(priming phosphorylation)、このリン酸化に誘導されCKIがAdomainに結合し、さらに多くのserine残基をリン酸化すること(main phosphorylation)が判明した。NF-ATには3ヶ所の核移行シグナル(NLS)配列があり、このNLSについて活性化機序を調べたところ、A,Bdomainの間にある3-4個のserineのリン酸化部位を含む20-30アミノ酸配列(Zdomain)がNLSに結合し、分子内NLSmaskingを起こす。カルシニューリンのCdomainへの結合は脱リン酸化によるZdomainの脱リン酸化を惹起し、NLSの露出による核内移行シグナルの開始という一連のカスケードが働いていることが明らかとなった。 3) CKIとnPKCによるNF-ATの調節機序:PKChおよびCKIの特異性を調べるためPKCの各サブタイプおよびCKI、CKIIについて検討したところ、NF-ATキナーゼ活性はCKIIには殆どなくCKIが非常に強く、またPKCのサブタイプの内nPKCにあたるPKCηとPKCθのみがNF-AT核移行阻害活性を持っていた。PKCηおよびPKCθは直接NF-ATをリン酸化しないものの核内移行阻害活性は強く、詳細を検討した結果、CKIを特異的にリン酸化し結合する際にNF-AT/CKI複合体を骨格系分画ヘトラップすることが判明した。この事実はnPKC活性化シグナルがCKIを介してNF-ATを負に制御している可能性を示唆しており、nPKCを活性化する上流の伝達系や受容体の存在は、T細胞活性化を抑制する情報伝達系を解明する上で重要であり、今後詳細を解析する予定である。
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