研究概要 |
近年の疾病構造の変革に対応し、生活習慣病の制圧の基礎となる医薬リードの創製を最終目標として、最近その優れた薬効から注目されているサリドマイドをリードとした新規生物応答調節分子の設計とその活性発現機構の解析を行った。 主たる研究成果は以下のとうりである。 (1) サリドマイドによるTNF-αの生産調節作用が、細胞種並びに細胞刺激剤に特異的な2方向性のものであることを発見した。 (2) サリドマイドの構造展開からフタルイミド系化合物を系統的に設計して合成し、極めて強力な2方向性TNF-α生産調節剤(FPP-33,PPS-33等)の創製に成功した。 (3) 上記の2方向性TNF-α生産調節作用が光学異性依存的であることを発見した。そこで、不斉炭素を導入したフタルイミド系化合物を系統的に設計して合成し、構造展開によって2方向性TNF-α生産調節作用の完全分離、すなわち純粋なTNF-α生産促進剤[(S)-FP13P]並びに純粋な生産抑制剤[(R)-FPTN等]の創製に成功した。 (4) TNF-α生産の促進並びに抑制にかかわる薬物受容体候補タンパクの探索のための蛍光性プローブ、並びにアフィニティゲルをデザインして合成し、これらを利用して候補蛋白をSDS-PAGE上にて検出することに成功した。 (5) 母化合物サリドマイドの有用な薬効を再構築すべく構造展開による活性拡張を図り、強力な抗アンドロゲン(FPTP,FPTHなど)を創製することに成功した。 (6) サリドマイドの血管新生阻害作用や抗転移活性にかかわるアミノペプチダーゼNに対する阻害剤への活性拡張を企画し、構造活性相関における解答を一部得ると共に、強力かつ特異的な阻害剤、PIQ-22の創製に成功した。
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