研究概要 |
ランダムスクリーニングにより得られる生物活性天然物の特徴は「構造の非予測性」と「構造の意外性」であり、創薬のリードになりうる化合物を発見する可能性を秘めている。未知の部分のある「シグナル伝達系の解明」に役立つ化合物を見いだすことを目標に,1.天然物のスクリーニング,2.リード化合物の構造活性相関の検討から特定のチロシンキナーゼを選択的に阻害する化合物の発見に焦点をあてた. 1. 培養細胞を用いる活性天然物のスクリーニング項目としてはIL-2産生の促進あるいは抑制(ヒトT細胞由来ジャッカルト株)、IL-6産生促進あるいは抑制(マウス頭蓋骨骨芽細胞由来株)チロシンキナーゼ阻害(vSrc導入NIH3T3、cSrc)について検討を行った.チロシンキナーゼ以外の活性の測定はELISAを主体とし、IL-2産生の抑制については,毒性の強いストリキニネに作用を見いだしたが,生薬を加熱する修治により含量が高まるより毒性の少ないイソストリキニーネに比較的強い茶寮を見いだした.また他のインドールアルカロイドにも同様の作用を見いだしている. 2. 昆虫より分離された抗菌性ペプチド5-S-GIutathionyl-beta-alanyldopa(5-S-GAD)は、チロシンカイネースのvSrcには阻害を示すが、レセプター型のEGFには阻害を示さない。この化合物を出発物質として34種のアナローグを合成し,vSrc自己リン酸化,cSrc基質リン酸化についてまず検討した結果,最もvSrcの自己リン酸化に対して最も活性が強がったアナローグはcSrc基質リン酸化に対しては基質拮抗型であった.構成アミノ酸をーつづづ取り去り最終的に到達した5-S-cysteinyldopamineはcSrc基質リン酸化に対し基質とATPの両者に拮抗的な阻害活性を示した.またこれらの化合物はいずれもSrcファミリーのLck,非SrcファミリーのAbl,膜結合性のEGFRに対しては全く活性を示さず,Src特異的である事が明らかになり,これまでにないチロシンカイネース阻害剤である.
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