Mixed lineage kinase(MLK)は、蛋白質燐酸化酵素の触媒領域を鋳型にしてPCR法で同定されたセリン・スレオニンーキナーゼである。構造上の特徴として、MLKsはSH3ドメイン、ロイシン-ジッパーを有するため、他の蛋白質と相互作用しながらその機能を発現していると考えられる。しかしながら、これらのキナーゼの細胞内情報伝達系における位置づけ、あるいは生理的機能は殆ど不明である。私共は、MLKがMAPKKKとして機能すること、MLK2/3は、CRIBモチーフと称される領域を介し低分子量GTPaseであるCdc42とRacに特異的に結合すること、海馬特異的Ca結合蛋白質ヒポカルシンとも結合することを明らかにしてきた。 最近、神経細胞において、カルモジュリン依存性のCa情報伝達経路がJNK活性化を惹起する事が報告されている。そこで、カルモジュリン以外のCa結合蛋白質もMAPキナーゼ-カスケードの制御にかかわる可能性が考えられ、ヒポカルシン依存性Caシグナル経路とMAPキナーゼ活性化との連関を解明を試みた。最初に、MLK2におけるヒポカルシン結合領域を同定した。すなわち、ヒポカルシンはMLK2のc末端可変領域のうちのN末端部分(aa660-710)に結合することが酵母Two-hybrid法で明らかにされた。次いで、ヒポカルシンとMLK2をCOS細胞に強制発現させてMLK2依存性JNK活性化に与える影響を調べたが、有意な結果は得られなかった。また、研究遂行中に、新たなMLK2結合蛋白質としてプレクストリン相同領域(PHドメイン)を有するストラチフィンを同定した。
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