研究概要 |
多彩な花色は、そのほとんどがアントシアニンによる。この花色素は、精密な構造認識に基づく分子会合体となって初めて美しい色を発現する。これらの分子会合体の形成には、金属イオン、コピグメントのみならず、分子内の芳香族酸残基なとも関与し、いずれも、結合糖鎖によって会合の立体が規定され、自己組織化した分子会合体によりアントシアニンの深色化と安定化が起き、千差万別な色となる。会合における不斉分子認識と花色発現の関係を明らかにするためには、コピグメントの非天然型のL-糖鎖を持つフラボンが必須である。 本研究では会合実験に用いる配糖体フラボンとしてウルギノサの青色色素金属錯体色素の構成成分の4',7-diglucosylapigeninを考えた。このapigeninの4'-フェーノル性水酸基の求核性が小さいために直接グリコシル化できなかった。新たに、フェノール性水酸基にアセチルフッ化グルコースを糖供与体を用い,3-フッ化ホウ素エーテル錯体をプロモーターとし、塩基存在下に、高収量で立体選択的にグリコシル化する方法を開発し、目的とするP-配糖体の合成に成功した。4',7-diglucosylapigeninの天然型D-、非天然型L-グルコースを持った可能な4種の全ての配糖体フラボンを合成した。4',7位がD-DとL-D、D-L、L-Lのdiglucosylapigeninを用いた再構成実験の結果、D-D体とD-L体が青色超分子色素形成したが、L-D体とL-L体からでは、紫色になり速やかに退色した。D-D体では、長期間安定であったが、D-L体は1日で退色した。4'位の糖の絶対配置が超分子形成に決定的役割をしていることが分った。自己組織化と発色には糖鎖が重要な役割をしていることが明かとなり、今後、この精密な分子認識機構を明らかにする予定である。
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