研究概要 |
受容体の過度の刺激により多くの受容体情報伝達は抑制される.この抑制は受容体発現細胞の保護機構だと考えられている.ヒスタミンH_1受容体においてもヒスタミン刺激,或いは,蛋白キナーゼC(PKC)の活性化により受容体情報伝達の抑制が引き起こされる.その抑制機構には受容体リン酸化が関与すると考えられる.ヒトのヒスタミンンH_1受容体の細胞内領域には多くのPKCによるリン酸化可能部位が同定された.ヒト・ヒスタミンH_1受容体細胞内領域にに相当する合成ペプチドのPKCによるリン酸化を調べたところ,第3細胞内領域のセリン(396)残基,セリン(398)残基,C末端領域のスレオニン(478)残基がリン酸化された.そこで,ヒト・ヒスタミンH_1受容体cDNAの遺伝子改変を行い,上記のセリン,スレオニン残基をアラニン残基に置換した部位特異的変異ヒスタミンH_1受容体(S396A H_1 R,S398A H_1 R,S396A/S398A H_1 R,T478A H_1 R)をチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)に発現させ,PKCの活性化によるヒスタミンH_1受容体脱感作を調べた.PKCの活性化によりS396A H_1 RおよびT478A H_1 Rは脱感作が引き起こされたが,S398A H_1 RおよびS396A/S398A H_1 Rには脱感作が僅かしか起こらなかった.正常およびS396A H_1 Rは脱感作されるとヒスタミンによるイノシトールリン酸蓄積におけるEC_<50>値が一桁増加し,PKC阻害薬によりその増加が抑制された.S398AH_1 RおよびS396A/S398A H_1 Rにはそのような変化はなかった.正常および変異ヒスタミンH_1受容体共にPKCを活性化してもヒスタミンに対する親和性に変化はなかった.以上の結果より,PKCによるヒスタミンH_1受容体脱感作機構は受容体第3細胞内領域のセリン(398)のリン酸化であることが明らかとなった.
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