研究概要 |
ショウジョウバエ肢形成過程で、主としてホメオボックス遺伝子BarH1,BarH2の上流及び下流に関与すると思われる遺伝子を探索した。昨年度同定を報告した20遺伝子に加え、新たにaristaless-like(all)を同定しDfrizzled-3(Dfz3)と共に詳しく調べた。allは、BarH1,BarH2の発現領域の内側で円盤状に発現し、その変異体は、同様にBarH1,BarH2の発現領域の内側で円盤状に発現するホメオボックス遺伝子aristalessと同様の表現型を示した。即ち、変異株では、BarH1,BarH2の肢中心部での発現抑圧が解除され、肢先端部の構造が欠損した。cDNAの構造解析の結果、allは、aristalessとは異なったグループに属するホメオボックス遺伝子であることが判明した。即ち、BarH1,BarH2は、肢中心部で少なくとも2種類のホメオボックス遺伝子allとaristalessにより負の調節を受け、逆にこれらの遺伝子は、肢のより周辺部でBarH1,BarH2により負の制御をうけていることになる。この相互抑制的な転写制御機構により肢のpretarsusとtarsiの境界が決められる。 Dfz3の性質を調べた。Dfz3は、新規のショウジョウバエWingless受容体であることが判明した。培養細胞を用て調べたところ、Dfz3はDfz2と同様に、培養液中のWinglessと結合し、弱いながらもシグナルを細胞内に伝達した。同様な弱いシグナル伝達活性は、UAS-Dfz3を用いた実験からも支持された。Dfz3は、planar polarityには、全く関係しなかったが、Winglessシグナリングが弱いときその活性を抑圧できることが分かった。これは、Dfz3が、非効率的なWingless受容体であることから期待される当然の結果かもしれない。Dfz3は、Winglessモルフォゲン勾配を結果として低下させ、より滑らかにする働きがあると示唆された。
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