研究概要 |
四肢パターン形成における位置価の決定に関与するSonic hedgehog(Shh),BMP,Wntの相互関係を理解するために,ニワトリ肢芽を用いて以下の点を調べた。 Shh-N遺伝子の異所的発現およびShh-Nタンパク質で処理した場合の重複肢形成の過程で,BMP-2,Patched,HoxDの発現を比較すると,20〜24時間を境に差が見られるようになる。すなわち,Shh-Nタンパク質ではBMP-2,Patchedは一過性にしか誘導されないのに対し,Shh-N発現細胞の移植では36時間以降も持続する。いずれの場合もHoxD12,HoxD13は36時間以降で強く誘導されてくるが,タンパク質処理では先端部の発現領域が融合しているのに対し,発現細胞移植では内因性の発現領域と明瞭に分離している。これらの結果はShhによる前後パターンの誘導がBMP-2を介して進行することを示すが,BMP-2のみでは不十分であり,位置価決定にはShh-Nで誘導される他の因子が関与していると推定される。 Wnt-5aはShhの発現領域でより強い発現が見られるが,これをRCASで肢芽全体で強制発現すると,主に前腕の尺骨,撓骨の短縮が起こる。AERを除去すると先端部前側での発現は消失するが,後側での発現は維持されている。このことは,Wnt-5aの発現がAERとZPAの両方に由来する因子によって調節されていることを示す。 ニワトリ肢芽の,AERではWnt-3aが発現し,一方マウス肢芽AERではWnt-3aの代わりにWnt-10aが発現している。これらの機能を比較,検定するため,RCASで強制発現したときの効果を調べた。その結果,Wnt-3aはAERの誘導に関与し,一方Wnt-10aはAER直下の間充織を未分化状態に維持する活性を持つ証拠が得られた。 Wntのレセプターとして機能するFrizzled(Fz)ファミリーのうち,Fz-4とFz-10をニワトリ胚で同定し,これらが肢芽で領域特異的な発現を示すことを見出した。特に,Fz-10は肢芽後部の背側で発現し,Shhにより誘導されるWnt-7aのレセプターとして機能していると考えられる。
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