研究概要 |
RNAポリメラーゼサブユニットRPB5がHBVX蛋白(HBx)と結合し、HBxのトランス活性化に関わる結果(EMBO.J.,1995)をもとに、HBxによる転写装置の修飾機構を検討した。本研究は転写装置と直接相互作用して転写を正又は負に修飾する転写制御の新しい局面を明らかにする研究である。得られた成果は、1)人為的プロモータを用いたin vitro及びin vivo転写系で、HBxは転写活性化能は示さず、転写補助因子能(Coactivator)を示し、種々の異なった転写活性化系にCoactivatorとして機能した。各種変異HBxを用いたcoactivator機能の必須領域はトランス活性化ドメインと一致し、精製はHBxはHeLa核抽出蛋白の内在性転写活性化因子の活性化転写を促進した(J.Biol.Chem.,1998)。これらの結果は、従来からのin vivoで報告されたトランス活性化はcoactivator能の結果であると推定された。2)RPB5結合蛋白がHBxの機能修飾と拮抗することを想定して、RPB5結合蛋白cDNAの単離を行い、新規のRMP(RPB5-mediating protein)を同定した(Mol.Cell.Biol.,1998)。RMPは、TBPやHBxとの結合能は示さず、RPB5と特異的に結合した。RMPの過剰発現はHBxトランス活性化に拮抗し、HBx非存在下で活性化転写を制御するCorepressor活性を示した。これらのRMPの転写抑制効果には、RPB5結合領域が必須であった。これらの結果は、RMPがHBxと機能的な拮抗因子であることを示唆した。
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