研究概要 |
本研究では、解像力数Å-数nmの原子間力顕微鏡(Atomic Fource Microscopy:,AFM)を用いて以下結果を得た。 1. 約2万塩基対からなるβグロビン遺伝子のエンハンサー領域(Locus Control Region(LCR))において、調節タンパク質Bach1/MafK複合体は塩基配列により予想される複数の結合部位にそれぞれ同時に結合し三重DNAループを形成すること、そのためには、Bach1分子中のタンパク質会合領域(BTBドメイン)が必要であることを示した(投稿中)。 2. 数千塩基対からなるDNAとコアヒストン(ヒストンH2A、H2B、H3およびH4各2)とからヌクレオソームを再構成し、1つのヌクレオソームあたり146塩基対のDNAが取り込まれることを定量的可視化により示した。また、Xenopus 5S RNA遺伝子とコアヒストンとからヌクレオソームを再構成すると、ヌクレオソームが5S RNA遺伝子のポジショニング配列に相当する部位に形成されること、さらに、この系にヒストンHlを加えるとヌクレオソーム上のDNAの巻きかたが更にtightになることを示した(Sato et al,1999)。 3. DNAトポイソメラーゼIIは会合して二量体になると、会合面がDNAを通す穴を形成すること(Nettikadan et al.,1998)、AFMとストップドフロ一法との併用でDNAヘリカーゼのらせん巻き戻し過程が可視化できること(投稿準備中)、また、AFMの探針にカーボンナノチューブ(先端経5nm)を使用することにより解像力が数倍から10倍上昇することを示した(Akita et al.,1999;Nishijima et al.,1999)。 近年、“DNAから染色体へ"の間をつなぐものとして「ヌクレオソームのポジショニング」といったヌクレオソームレベルの事象が注目を集めている。このクロマチンレベルでの転写機構解明に向けて、分子生物学的手法(ヌクレオソーム再構成)と構造生物学的手法(AFM)との組み合わせは強力なアプローチとなると期待される。
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