研究課題/領域番号 |
10176233
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
渡辺 慶一 東海大学, 医学部, 教授 (00055865)
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研究分担者 |
山本 順寛 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (60134475)
竹腰 進 東海大学, 医学部, 助手 (70216878)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1998年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | diacylglycerol / protein kinase C / neuronal cell death / signal transduction / oxidative stress |
研究概要 |
先に、我々はジアシルグリセロール(DAG)が過酸化(DAG-OOH)される事により強力なCキナーゼ(PKC)活性化物質に変質することを示し、また、DAG-OOHが多様なPKC分子種群の中でもαおよびδ分子種を特異的に強く活性化することを明らかにした。本研究では、まず、PKCδ分子種の発現の高い神経系のラット副腎褐色細胞腫由来のPC12(δ(+++))と発現の低いラット胎児大脳皮質初代培養神経細胞(δ(±))をDAG-OOHにより処理しその傷害作用を検討した。その結果、δ(+++)神経細胞では神経突起のビーズ状の変性と共に神経細胞死が引き起こされるのに対して、δ(±)神経細胞ではDAG-OOHによる細胞傷害作用は認められなかった。また、α分子種は何れの神経細胞(δ(+++)および(±))においても発現している点から、この神経細胞傷害にはδ分子種が重要な役割を果たしていると考えられた。ビーズ状に変性した神経突起内では、microtyubuleの崩壊とともに神経内分泌顆粒の貯留が認められた。更にビーズ状に膨化した部分では、リン酸化されたtau蛋白が著明に増大していた。DAG-OOHによる傷害作用はPKC阻害剤およびMAP kinase kinase(MEK)阻害剤により抑制される結果から、その細胞死は、PKCδ活性化→Raf活性化-MEK活性化→Erk活性化→Tauの過剰リン酸化→microtubuleの崩壊の経路を経て引き起こされるものと考えられた。 更に、この神経細胞死におけるPKCδ分子種の重要性を確定的にするために、DAC-OOH処理により傷害の起こらなかったラット胎児大脳皮質初代培養神経細胞に、アデノウイルスベクターを用いてPKCδ、δmutant(PKC活性を持たない)、αの遺伝子を導入し、それぞれのPKC分子種の高発現細胞を作製した。この細胞にDAC-OOHを作用させたところ、δ分子種を高発現させたラット胎児大脳皮質初代培養神経細胞にのみ神経突起のビーズ状の変性が引き起こされ、α、δmutantの高発現細胞には全く傷害は認められなかった。以上の結果から、DAC-OOHによるδ分子種の特異的な活性化(特殊なCキナーゼ活性化)が明らかとなるとともに、神経細胞死にいたる機序にδ分子種が重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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