研究課題/領域番号 |
10176234
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
高松 研 東邦大学, 医学部, 教授 (90154898)
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研究分担者 |
増尾 好則 東邦大学, 医学部, 助手 (60301553)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1998年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | ヒポカルシン / カルシウム結合蛋白質 / 海馬 / 一過性脳虚血 / グルタミン酸 / キノリン酸 |
研究概要 |
海馬の神経細胞とくに錐体細胞は、一過性脳虚血後の遅発性細胞死にみられるごとく易障害性を有している。これは、脳虚血後にグルタミン酸の放出が増加し、これを受容することによって細胞内カルシウム濃度が上昇して細胞が死に至るといわれている。一方、ヒポカルシンは、海馬錐体細胞に特徴的に発現しているEFハンド型カルシウム結合蛋白質で、神経伝達物質の放出や受容体以降の伝達効率を調節している可能性、および細胞内カルシウム濃度変化の緩衝作用をもつ可能性が示唆されている。そこで、まずキノリン酸をマウス海馬CA1領域に投与し、細胞死を誘導した際のヒポカルシンの発現量をイムノブロットおよび免疫組織化学染色により測定した。キノリン酸4〜100nmolの投与により、軽〜重度の細胞死が誘導されたが、ヒポカルシンの発現量は細胞の障害程度と比例して減少し、細胞死を防御するような増加反応は認められなかった。次に、ヒポカルシンの発現低下と細胞死との関連を明らかにする目的で、ヒポカルシン遺伝子ノックアウトマウスを作製した。ヒポカルシンノックアウトマウスでは、ヒポカルシンのアイソフォームであるNVP1〜3の代償的発現変化は観察されなかった。また、プレシナプスマーカーのシナプトフィジン、ポストシナプスマーカーのMAP2やドレブリンの発現量、パターンともに明らかな変化は認められず、海馬の発達・発育過程への影響は見出されなかった。そこで、ヒポカルシンノックアウトマウスの海馬CA1領域にキノリン酸30nmolを投与したところ、対照群ではCA1領域の一部に細胞死が誘導されたのに対し、ノックアウトマウスではCA1〜3領域および歯状回に細胞死が認められ、海馬神経細胞がより脆弱であることが示された。本結果は、ヒポカルシンが細胞内カルシウム濃度変化を緩衝することにより神経細胞死を防御する役割を有していることを示唆するものである。
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