研究概要 |
動脈硬化とその合併病変を基盤に発生する臓器虚血(梗塞)の病態解析、またその予防、治療法確立の為の血管内皮細胞の遺伝子制御機構に関する以下の研究を行った。 1. 血管リモデリングにおける新生血管の病態学的意義:これ迄、動脈硬化進展の病理形態学的指標の一つとして硬化病変における血管新生が重要であることを明らかにしてきた。このことは1)動脈硬化を含めた病的血管リモデリングの発生病態を炎症・修復反応として総括しうること、2)その誘導因子としてVEGF・受容体系を中心としたサイトカイン網が重要であることを明らかにした。 2. 血管新生関連因子の遺伝子制御:病的血管リモデリングに関与しうる諸因子の産生制御法の開発の為に、炎症性サイトカインの転写誘導に関与するSp-1,AP-1,NFkB,Egr-1のデコイオリゴを用いたin vitro,in vivoの検討を進めている。これらデコイを用いてVEGF,TGF-β1,組織因子など血管新生に関与する諸因子の平滑筋細胞産生制御に有効であることを見出している。現在、動脈硬化内膜内の血管新生モデルを含めた各種血管新生病動物モデルを用いた治療的有効性について病理学的検討を進めている。 3. PTCA後再狭窄の発生病態解析と治療法、予防法の基礎的研究の為、PTCA後DCA症例の病理学的検討を行い、6カ月以内の早期再狭窄発生のリスク因子の一つに硬化内膜内血管新生が挙げられることを明らかにした。この血管新生にも増生平滑筋細胞が産生するVEGFを中心としたサイトカインが関与していることが明らかとなった。 4. 血管壁炎症、血栓形成の発生病態におけるNOの意義についてNFkB活性化機構を中心に検討し、炎症性サイトカイン刺激時の内皮細胞、平滑筋細胞が発現する組織因子、PAI-1など過凝固関連因子の産生、その制御機構におけるNOの意義を明らかにした。
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