研究概要 |
血管平滑筋の形質転換に伴うαトロポミオシン・アイソフォーム変換の調節に関与する情報伝達機構を明らかにする事を目的として今年度の研究を行った。 1. 平滑筋細胞を培養すると、培養3〜5日目を最大に、一過性に非平滑筋型αトロポミオシンの発現が増加した。非平滑筋型アイソフォームの発現増加に一致して、BrdUの取り込みが、培養3日目を最大に一過性に増加した。 2. コンフルエントの細胞を、2日間血清を含まない培地で培養し、再び血清刺激を行うと、刺激1.5時間で、非平滑筋型αトロポミオシンの発現が増加した。血清濃度1%から増強作用が認められ、3%で最大効果に達した。この時、非平滑筋型アイソフォームの発現は刺激前の約2倍に増加した。 3. 血清再添加による非平滑筋型アイソフォーム発現増加は、H-7処理により完全に抑制されたが、wortmanninは有意な抑制作用を示さなかった。 4. phorbil 12,13 dibutyrateは、血清刺激と同様に、刺激1.5時間で非平滑筋型アイソフォーム発現を増加させた。1nMから増強作用が認められ、100nMで最大効果に達した。この時、非平滑筋型アイソフォームの発現は刺激前の約2倍に増加した。 5. Phorb01 12,13 dibutyrateは、1.5時間あるいは24時間刺激を行っても、BrdU取り込みには影響を与えなかった。血清刺激も、1.5時間ではBrdU取り込みを増加させなかったが、24時間刺激を続けると、濃度依存性にBrdU取り込みを増加させた。 血管平滑筋細胞は、増殖性増加に伴い、脱分化し、非平滑筋型αトロポミオシンが増加する。この非平滑筋型アイソフォーム増加には、Cキナーゼが関与することが示唆された。Cキナーゼ依存性発現調節は、細胞周期がS期に入る前、おそらく、GO/Gl移行期に生じると考えられた。
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