研究概要 |
CREB binding protein(CBP)を初めとする転写コアクチベーターは,1)そのリジン残基のε位へのアセチル基転移酵素として,また2)RNA polymerase IIを始めとする基本転写因子群との結合を介して種々のシグナル伝達特異的・細胞分化特異的転写を統合的に調節している.わたしたちは血管平滑筋細胞(VSMCs)での転写コアクチベーター機能を解析し,その細胞生物学的特徴を明らかにすることを目指している.本年度は上記1),2)に関して以下の解析を重点的に行った. 1) 核内アセチル化に関して. 1-1. 抗アセチル化リジン抗体(α-AK)の作成:α-AKは試験管内でアセチル化したヒストンを検出,免疫染色により核をのみ認識した.また,これらの所見はε-acetylated lysineにより特異的に阻害された. 1-2. α-AKの動脈硬化巣への応用:動脈硬化巣の中膜平滑筋細胞の核が強くα-AKに反応した. 1-3. α-AKのVSMCsへの応用:トロンビンなどにより培養血管平滑筋細胞の核内アセチル化の亢進が認められた. 2) シグナルコアクチベーターCBPのVSMCsに対する効果に関して. 2-1. antennapedia(Ant)-NLS/CBP fragnemts(fr.)の細胞内局在:ビオチン化Ant-NLS/CBP fr,は添加30分後にはほぼ全てのVSMCsの核に取り込まれた. 2-2. Ant-NLS/CBP fr.のVSMCs増殖への影響:VSMCs増殖の制御が可能であった. 本研究により,(トロンビン)受容体シグナル伝達が核内因子アセチル化へと至る可能性が示された.また,Antが血管平滑筋細胞への導入に有効であること.またCBPの血管平滑筋細胞の増殖への関与が示された.
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