研究概要 |
我々はまずCnAとBcl-2の結合に注目し、脱リン酸化酵素であるCnAによるBcl-2の機能調節を調べた。Bcl-2には7-8ヶ所にリン酸化部位があり、これまでの報告ではserine70が機能的なリン酸化部位としての可能性を指摘されている。Dexanlethzone誘導apoptosisにおいて、各リン酸化部位をmimikした変異体(Sto A,S to D)によるBcl-2の抗アポトーシス効果を判定したところ、BH4domain内にあるS24がBcl-2の機能を劇的に変化させることを見いだした。即ちserine24をalanineに置換した脱リン酸化型Bcl-2-S24Aは強い抗アポトーシス作用を示すが、serine24をaspartateに置換したリン酸化型Bcl-2-S24Dは抗アポトーシス効果が無いばかりか、逆にアポトーシスを誘導するという結果を得た。またリン酸化型Bcl-2は結合蛋白であるBaxとの結合能を失っていた(投稿中)。最近の報告では、Bcl-2から乖離したBaxがミトコンドリア膜のMPT(Mitochondrial Permeablijty Transition)porcに結合し、cytochrome cの流出およびcaspaseの活性化によるアポトーシスの誘導につながることが示唆されている。これに加え我々の結果を考え合わせると、CnAとBcl-2キナーゼ(現在不明)によってBcl-2のBH4にあるserine24がリン酸化脱リン酸化により調節され、Baxの乖離によるミトコンドリアからのcytochromecの流出によるアポトーシスの制御系が存在していることが考えられる。今後、Bcl-2キナーゼの同定も含め詳しい解析を続けていく予定である。一方、JohnC.Reed等は我々との共同研究によりeanはBcl-2だけでなくpro-apoptoticでBc1-xL結合であるBadをもリン酸化し、アポトーシスを制御していることを見いだした(Science in press)。これらの結果はserineのリン酸化脱リン酸化によってアポトーシスが直接制御されていることを証明しており、リン酸化による構造変化や他の蛋白との結合様式の変化を解析することは今後非常に重要な課題となる。我々はBcl-2の機能をリン酸化による構造変化の観点から解析するために、Bcl-2の変異体Bcl-2-S24A,Bcl-2-S24D,Bcl-2wtの3種類をpET vectorを用いた大腸菌発現系にて蛋白精製を試みた。Bcl-2-S24A,とBcl-2wtに関しては4-5mg/Lの蛋白発現が得られたにも関わらず、Bcl-2-S24Dは発現自体が大腸菌の増殖を抑制し殆ど精製蛋白が得られなかった。今後の課題として、細胞障害性を持つ蛋白の大量発現系の開発がまず必要であり、現在昆虫細胞、hvbridoma等を用いた分泌系による蛋白発現を目指している。
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