研究概要 |
HIVの細胞内侵入に必要なCD4以外の分子として、ケモカイン受容体であるCCR5及びCXCR4が1995年から1996年にかけて同定され、それぞれマクロファージ指向性HIV及びT細胞株指向性HIVの感染を支持することが判明した。またHIVは、通常マクロファージ指向性HIVすなわちCCR5を使用するウイルス(R5)としてヒトに感染し、CCR5のリガンドであるMIP-1α,MIP-1β,RANTESなとのCCケモカインに感受性を有するが、病状進行に従いCCケモカイン抵抗性からT細胞株指向性HIVすなわちCXCR4使用性(X4)を獲得していくことが判明している。本研究ではマクロファージ指向性HIV(R5)からケモカイン抵抗性HIVの分離にin vitroで成功し、その耐性ウイルスの解析から、エンベロープの2番目と3番目の可変領域(V2とV3)の両者のそれぞれ1アミノ酸置換を同定した。またそれぞれ単独の置換では耐性は獲得せず、両者のアミノ酸置換が必要であることを分子生物学的に明かにした。しかしながらこれら2個のアミノ酸置換だけではT細胞株指向性は獲得しておらず、またケモカイン受容体使用もCCR5のみであり、CXCR4の使用を獲得しているわけではなかった。これらの所見よりCCケモカイン耐性の獲得だけではT細胞株指向性の獲得、すなわちCCR5からCXCR4使用への獲得には不十分であり、さらなる複数個のアミノ酸置換が必要であることが示唆された。また以前よりHIVの細胞指向性を決定するウイルス側領域はV3を中心として、V2もその指向性を修飾することが明かになっていたが、今回CCケモカイン耐性獲得にもこの両領域が関連していることを明かとした。
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