研究概要 |
今年度は以下に述べる項目を研究目標として取り上げ実験を行った。1)抗体酵素のrefolding時の微量金属の影響、2)double catalytic triadの意義と活性との関連、3)抗体酵素の新展開、4)HIV増殖抑制活性の検討。 1) 抗体酵素41S-2-Lを用いて微量金属の影響を調べた。反応初期にEDTAを加えると抗原の分解反応が完全に阻害された。この系にFe,Zn,Mg,Ca,Cu,Coなどの2価イオン(Feは3価)を添加するとFeでは完全に活性が回復した。Znでは80〜90%の活性回復が見られたが他のイオンでは全く効果がなかった。反応途中にEDTAを加えても活性の阻害は受けないことから、Feイオンは活性サイトにあるのでなく、41S-2-Lの構造変化に効いていると推定された。 2) 41S-2抗体の構造解析から、double catalytic triadが軽鎖に存在することは指摘してきたが、重鎖にcatalytic triadが一カ所存在していた。しかもその位置はCDRとは関係がなく、しかも分子表面上に存在していると推定された。そこで重鎖とHIV抗原とを反応させたところ重鎖が軽鎖ほでではないがやはりHIV抗原を分解した。これはcatalytic triadが酵素活性の一部を間違いなく担っていると言える。 3) 41S-2-Lに続く2例目の抗体酵素の探索を手掛けている。我々の所有するあらゆる抗体の遺伝子配列を読んで行っているが、非常に興味ある抗体が見つかっており、今後の研究に大いに期待が持てる。 4) いろいろな事情でこの検討が遅れ気味であったが、やっと第1回目の検討結果が届いた。この41S-2-LはHIV増殖抑制活性を有していることが判明した。今後詳細に詰めて行く予定である。
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