研究課題/領域番号 |
10180227
|
研究種目 |
特定領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
|
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
加藤 真吾 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10177446)
|
研究分担者 |
杉田 哲佳 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00296766)
平石 佳之 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30255434)
|
研究期間 (年度) |
1998
|
研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
|
配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
1998年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
|
キーワード | HIV-1 / 薬剤耐性 / 遺伝型 / 血中薬剤濃度 / 多剤併用療法 / 血漿RNA / プロウイルス / 耐性検査 |
研究概要 |
薬剤耐性HIV-1の出現は多剤併用療法失敗の主要な原因の一つとなっている。したがって、HIV-1の多剤耐性獲得の機構を明らかにすることは、抗HIV-1治療の成績を向上させるために重要な課題である。本研究では、血中薬剤濃度と薬剤耐性HIV-1出現との関連性について検討した。対象は、慶應義塾大学病院特殊感染症クリニックに外来受診中のHIV-1感染者2例(C5とC13)であった。HIV-1 env遺伝子V3領域を含む327塩基対の塩基配列を決定し、サブタイプAからHの参照配列を用いて系統樹分析を行った結果、C5のサブタイプはA、C13のサブタイプはBであった。C5はネルフィナビル、AZT.ddCの投与を受け、C13はネルフィナビル、MT、3TCの投与を受けた。治療開始前のCD4細胞数は、C5では138細胞/mlで治療開始後も漸減傾向であった。C13では505細胞/mlで治療開始後も同じく漸減傾向であった。治療開始前の血漿HIV-1 RNA濃度は、C5では2,800コピー/mlで、治療開始後17ヶ月まで検出限界以下であった(サブタイプAに特異的なプライマーを用いて測定した)。C13では60,000コピー/mlで、治療開始後一旦検出限界以下になったが、3ヶ月後から徐々に上昇し、6ヶ月後には10,000のオーダーになった。両症例の血中ネルフィナビル濃度をHPLCによって測定した結果、C5は投与4時間後で2000ng/ml、8時間後で832ng/ml、C13は投与12.5時間後で1240ng/mlであった。クリアランス率を考慮すると、C13の方がC5よりも、血中ネルフィナビル濃度が4倍程度高いと考えられる。C5とC13のそれぞれプロウイルスと血漿ビリオンのプロテアーゼコーディング領域をnested PCRで増幅し塩基配列を決定した結果、C5では治療開始後17ヶ月までネルフィナビル耐性を示すアミノ酸置換は検出されなかったが、C13では治療開始後7ヶ月からネルフィナビル耐性を示すD30Nのアミノ酸置換が検出された。すなわち、当初の予想とは反して、血中ネルフィナビル濃度の高いC13のHIV-1の方が先に薬剤耐性を獲得した。治療開始前の血漿HIV-1 RNA濃度はC13の方が高かったことが薬剤耐性HIV-1の出現とより関係している可能性がある。本研究の結果、薬剤耐性HIV-1出現の容易さは血中薬剤濃度だけでは必ずしも決まらず、HIV-1の複製能やサブタイプなどの様々な要因を考えなければならないことが示唆された。
|