研究概要 |
細胞死を誘導する細胞表面レセプターであるFasとそのリガンドであるFasリガンド(FasL)によりAIDS発症時におけるリンパ球減少が生じる可能性が示唆されている。また、昨年度までに我々はII型細胞表面膜蛋白質であるFasLがマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって切断され,可溶型FasLとして遊離されることを見いだした。その後,切断された可溶型FasLが活性化リンパ球細胞にアポトーシスを引き起こす能力を有するとが判明したが,病態との関連については不明のままであった。本研究において,我々はクローニングしたサルFasLの遺伝子配列を元にrcombinat FasLを作成し、可溶型サルFasLの定量システムを樹立した。また、このシステムを用いてSIV感染後のサルにおける末梢血中の可溶型FasL量をモニターした結果,ウイルス量(p40)のピーク前後で可溶型FasL量も増加することが判明した。さらに,SIV感染カニクイサルにヒドロキサム酸型MMP阻害剤(KBR8301)を投与したところ末梢血中の可溶型FasL量が低下することが確認された。SIV感染に伴うCD4^+リンパ球の減少はMMP阻害剤の投与により回復されることが判明したがその効果は一過性であった。また,この時,p27量は逆にMMP阻害剤の投与により上昇することが明らかとなった。以上の結果はMMP阻害剤の投与により可溶型FasLの遊離が抑制された結果,CD4^+リンパ球のアポトーシスが抑制された可能性を示唆する。
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