研究概要 |
液胞はその内部を酸性に保ち,液胞膜を介した化学浸透圧的エネルギー差を利用して代謝産.物・無機イオンを輸送する.高等植物の液胞膜を介した化学浸透圧エネルギー差は,H^+-ATPase,H^+-PPaseの二種のイオンポンプの機能による,本研究では、高等植物の形態・組織構築に果たす液胞の生理的機能を明らかに.する研究の一環としてオルガネラ酸性化の制御機構に焦点を結び,細胞基質と液胞のイオン環境の調節を分子レベルで解析する系の構築を進めた.シロイヌナズナの液胞膜H^+-PPaseのcDNA(AVP3)をライブラリーから取得し,これを出芽酵母の構成的かつ強発現性プロモータの下流において出芽酵母に導入した.細胞分画法・蛍光抗体法の両手法で,66-kDaのシロイヌナズナH^+-PPaseが出芽酵母の液胞に発現されることを確認した.この形質転換酵母より液胞膜小胞を単離し,ATP(出芽酵母内在性のH^+-ATPaseを駆動する),およびPPi(シロイヌナズナH^+-PPKSeを駆動する)依存に形成されるpH差.膜電位差を色素の蛍光クエンチングを指標に測定した.ATPase、PPaseの両者をもつ液胞膜小胞は,ATPもしくはPPi単独でH^+輸送を駆動したときよりも,ATP+PPiで駆動した場合の方が,大きなpH差を形成するが,一方,膜電位差は大きくは変わらない.このことは,液胞膜のイオン環境の制御には,膜電位差が重要な,おそらく制限的な因子として作用していることを示している.
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