研究概要 |
水チャネル分子を通して植物組織の分化、生長を解析することを研究の目的とした。水チャネルは多細胞で構築された組織の中の水の流れの方向、量を規定する重要な要素と考えた。本研究では、ダイコンから液胞膜型(γ-,δ-VM23)、細胞膜型(PAQ1,1b,1c,2,2b,2c)の8種の水チャネルcDNAを得て解析した結果、次の知見を得た。(1)細胞膜型は液胞膜型よりもN端側が20-30残基長く、一次構造上の相同性は低い。(2)いずれの水チャネルもダイコン実生の胚軸、生長中の根・葉などでmRNAが多く蓄積しており、細胞の生長時に活発に合成されていた。これ以外の組織においては、各分子種は独自の発現パターンを示し、個別に発現が調節されているものと推定された。(3)特に液胞膜水チャネルは量が多く、最も多い場合液胞膜タンパク質の40%を占める。その60%以上はγ-VM23であること、さらにダイコンの細胞膜では約10%に達することが明らかになった。これらの結果から、生長期の細胞、維管束周辺の細胞および塊根での水チャネル遺伝子の発現が活発であると結論づけられる。より詳細には、個々の細胞レベルでmRNAと水チャネルタンパク質の蓄積量を分析する必要がある。さらに水チャネルの細胞膜、液胞膜への局在化機構の解明を目的に、greenfluorescent protein(GFP)と水チャネル分子の融合タンパク質をタバコ培養細胞BY-2で発現させることを試みた。いずれの水チャネル分子も目的の膜に局在することを確認できた。本研究により、水チャネル分子を通して植物の成長、組織分化、水生理現象を、今後さらに解明していくための基礎的知見と実験系が整った。 液胞膜のH^+-pyrophosphataseとCa^<2+>/H^+antiporterについても細胞生長、細胞分化の視点での検討を進めている。
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