研究概要 |
非線形最適化の分野では,凸解析がその理論的なコアとなっている.一方,離散最適化の分野では,このような統一的な視点は存在しない.しかし,マトロイド的構造が良い性質と認知されている.「離散凸解析」は,連続変数に関する最適化と離散変数に関する最適化を統一的視点から捉える試みとして,研究代表者が提唱した理論体系であり,凸解析の理論とマトロイド理論の両者を結ぶ枠組みである. 現実問題として現れる離散最適化問題は,マトロイド的な構造をもつものばかりではないので,分枝限定法のような列挙型の算法や,近似算法などを利用することになる.どのようなアプローチにおいても,問題特有の離散構造の中から扱いやすい部分をうまく抽出することが肝要である.例えば,一般の離散最適化問題を解く際に,ネットワーク的な構造を部分問題として抽出する手法は多くの場合に有効である. 本研究の基本的なアイディアは,一般の離散最適化問題を解くために,離散凸解析で扱える問題を部分問題(子問題)として抽出しようというものである.本研究グループではこのアイディアに基づき,一般の離散最適化問題に対する効率的な解法の構築に取り組んだ.本研究グループの研究活動の成果として、以下のようなものが挙げられる: ●離散凸解析の枠組みにおいて中心的な役割を果たすM凸関数とL凸関数という概念の諸性質を示した。 ●M凸関数の最小化問題に対する効率的な算法を提案した。 ●整数格子点上で定義されているM凸/L凸関数の概念を、実数空間上の関数へと拡張した。 ●M凸/L凸関数の定義を緩和することにより、準M凸/準L凸関数の概念を提案した。 ●離散凸解析の経済均衡への応用について粗代替性とM凸性の同値性などの結果を得た。
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