配分額 *注記 |
37,300千円 (直接経費: 37,300千円)
2000年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1999年度: 15,900千円 (直接経費: 15,900千円)
1998年度: 18,300千円 (直接経費: 18,300千円)
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研究概要 |
本研究は最近その使用が広まりつつある高強度材料の腐食疲労について,より実際の環境に近い液膜下および乾湿繰り返し環境において再現・解析し,その評価法を確立しようとするものである。本研究では特に,電気化学的計測によりき裂先端でのアノード溶解反応を機械的なひずみに同期する電流または電位の変動として捉え,それらの波形の成分からき裂進展およびアノード溶解反応の大きさを求め,疲労き裂の発生の検出法およびき裂進展速度と腐食疲労寿命の推定法の確立を目指している。 前年度までの研究によって,定電位分極状態では機械的なひずみに応答する電流に含まれる高調波成分を周波数解析によって取り出すことにより,疲労き裂の発生と進展をモデリングできることが示された。本年度は,機械的なひずみに伴う腐食電位の変動を正確に測定する技術を確立し,液薄膜状態でのき裂の進展・アノード反応の加速に伴うき裂周辺での電位分布の変化を計測すること,濡れ・乾燥の繰り返しにおける電位と電流の変化を計測・解析することを目的とした。 工業用純鉄の丸棒試験片に直径0.8mm,深さ1.0mmの人工切欠きをつけ,弾性範囲内の応力比0.1の正弦波繰返し応力を印加し,塩化物を含む中性の緩衝溶液に間欠的に浸漬することにより乾湿を繰り返した。溶液中および乾燥過程での腐食電位の変化は,き裂発生以前では電気二重層の充放電に基づく極めて小さな変化(<0.5mV)であるが,き裂発生後はひずみに同期する電位振幅が数mVまで増加した。また,き裂の開口に伴うアノード電流の増加によって電位が低下するため,電位波形は最高応力の前後で切り取られた形になった。また,電位波形の周波数解析から,き裂発生に伴い第2次高調波が増加することが確認され,き裂発生のモニタリングに適用できることが示された。 湿潤・乾燥状態の水膜の再現性を高めるために,板状の試験片の4点曲げによる疲労試験を行った。試料上に形成された水膜によりカソード反応が増加することから,腐食電位の変動幅は小さくなった。しかしながら,水膜環境では比液量が小さくなり腐食生成物の沈殿形成も加速され,アノード反応が抑制されることから,腐食疲労き裂発生の大幅な加速現象は見られなかった。
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