研究概要 |
本研究は,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis,ALS)の発症機序を明らかにし,さらに治療法開発のための基盤を作ることを目的として,1.家族性ALS家系に関して,詳細な遺伝子変異の解析する,2.変異Cu/Zn SODタンパクのコンフォメーション変化と細胞障害機構について解析を加える,3.変異Cu/Zn SOD遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製し,運動ニューロンの変性機構を解析する,の3点について重点的に研究を行った。Cu/Zn SOD遺伝子変異の解析については,家族性ALS 33家系(37症例)について詳細な解析を行い,これまでに7家系で7種類のSOD1変異(Ala4Thr,lle104Phe,Leu106Val,lle111Phe,lle113Thr,Glu133Stop,Cys146Arg)を同定した。Ala4Thr変異,Cys111Tyr変異,Glu133Stop変異についてはこれまでに報告のない新しい変異であった。変異Cu/Zn SODタンパクの物性に関する研究では,1.細胞質内で凝集しやすい,2.SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で検出されるようなコンフォメーション変化を伴うものがあることを明らかにした。変異Cu/Zn SOD遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの作製については,これまでに我々の研究室で発見した遺伝子変異について,詳細な病理所見が判明しているAla4Thr変異およびlle113Thr変異を対象としてトランスジェニックマウスの作製を行った。現在,lle113Thr変異マウスを3ライン得て,生後12ヶ月目より後肢に軽度の麻痺を生じるラインが得られている。本研究で得られた培養細胞系,トランスジェニックマウスの成果を基盤として,変異Cu/Zn SODタンパクによる細胞障害機構の解析をさらに進める予定である。
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