配分額 *注記 |
5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
2000年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1999年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1998年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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研究概要 |
東大寺の正倉院に伝来した古文書(正倉院文書)の大半を占める写経所文書の研究には,江戸末期から明治期にかけて「整理」の名のもとに分断された帳簿や継文,解移牒符案,諸注文などを原形に復するという困難な作業が伴うが,近年,東京大学史料編纂所編纂『正倉院文書目録』,宮内庁正倉院事務所編『正倉院古文書影印集成』が順次刊行され,この復原作業の困難性が大幅に緩和された。その結果,写経所文書研究の環境は飛躍的に整い,従来,ともすれば等閑視されがちであった厖大な量の帳簿類から,古代史像に加味しうる新たな知見の抽出が可能になってきた。 本研究は,そのような情況の中で,写経所文書から,どのような諸事実が抽出できるかを,関係文書の復原作業をふまえて,写経現場で使用される一切経目緑と書写経典の照合や,写経関係文書の伝来形態の分類調査,複数の一切経に包摂される諸経典の遂一的検証,大量に残る食口案(食糧支給記録)に盛り込まれた情報処理の実践を通して,試論的に展開したものである。 もとより,厖大な量の写経所文書の研究は,まだその緒に就いたばかりであり,今後,様々な角度からの分析検討が求められることであろう。今回の研究で得られた知見をもとに,写経所文書の新たな側面を照射し,より豊かな古代史像構築のための糧を得てゆきたいと思う。
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