研究分担者 |
熊谷 智子 国立国語研究所, 日本語教育センター, 主任研究官 (40207816)
吉岡 泰夫 国立国語研究所, 言語変化研究部, 部長 (90200948)
相澤 正夫 国立国語研究所, 言語体系研究部, 部長 (80167767)
桐谷 滋 神戸海星女子学院大学, 教授 (90010032)
筧 一彦 名古屋大学, 大学院 人間情報学研究科, 教授 (90262930)
粕谷 英樹 宇都宮大学, 工学部, 教授 (20006240)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
2000年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1999年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1998年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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研究概要 |
本研究の主要な目的は,音声によるパラ言語情報の伝達メカニズムを音声科学の手法によって解明することにあった.また,副次的目的としてパラ言語的な意味の記述方法の開発を目指した. パラ言語情報の伝達メカニズムを解明するために,最初に韻律特徴に注目した音響的分析を実施した.「山田さんですか」「そうですか」といったテキストを「疑い」「感心」「落胆」「無関心」「中立」等のパラ言語的意味で発音しわけた資料を分析したところ,発話持続時間長,ピッチ形状,分節音の音質,発声様式,等にパラ言語情報の指定と相関した音響上の変動が組織的に観察されることが判明した.持続時間やピッチ形状の差は発話の両端(冒頭と末尾)において特に顕著であった. 続いて,発声様式(声帯の振動様式)の差を解明するためにファイバスコープと高速度ビデオ装置を用いた声帯振動の精密観測をおこなった.その結果「疑い」ではpressed phonation,「落胆」ではbreathy phonationが生じていることが確認された.こうした発声様式の差が音声信号のスペクトルに及ぼす影響をARXモデルを用いて予測したところ,観測されたスペクトルとよく一致することが確認された. さらに,パラ言語情報が分節音の調音運動に及ぼす影響を解明するために,EMMA装置を用いた調音運動の観測を実施した.その結果,舌全体が「疑い」では前寄りに「感心」では後寄りに移動していることが確認された.また,母音だけでなく子音にも同一の影響が観察されることから,パラ言語情報による調音運動の変動は個々の分節音に対する影響ではなく,発話の全体に関する影響であること,つまり声質の変動であることが確認された. パラ言語的意味の記述については,(1)小説のテキストに含まれる「声の調子」に関する表現の分類,(2)音響分析に用いた資料の知覚実験と多次元尺度法による解析,(3)声質の記述語セットの構築,(4)幼児による感情音声の知覚,などに関する研究を実施したが,これらを統一的に記述する方法の開発にまではいたらなかった.
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