研究課題/領域番号 |
10440094
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
固体物性Ⅰ(光物性・半導体・誘電体)
|
研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
新井 正敏 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (30175955)
|
研究分担者 |
猪野 隆 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (10301722)
大友 季哉 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (90270397)
古坂 通弘 (古坂 道弘) 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60156966)
|
研究期間 (年度) |
1998 – 1999
|
研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
|
配分額 *注記 |
12,800千円 (直接経費: 12,800千円)
1999年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
1998年度: 9,700千円 (直接経費: 9,700千円)
|
キーワード | 非晶質 / パルス中性子源 / 非弾性中性子散乱 / フォノン / 動的構造因子 / 分散関係 / ボゾンピーク / 中距離相関 / ガラス / ダイナミクス / 中性子 |
研究概要 |
典型的なネットワークガラスであるSiO_2ガラスとNi_<67>Zr_<33>金属ガラスについて、パルス中性子源による非弾性中性子散乱測定を行い、広範囲の波数-エネルギー空間において動的構造因子S(Q,E)を観測した。そのSiO_2ガラスのS(Q,E)において音響フォノン的な分散関係を明瞭に観測することに成功した。分散関係は波数Qに対して静的構造因子S(Q)と同じ周期を示しており、擬似的なブリルアンゾーンの存在を示唆するものであると考えている。ただし、S(Q)において中距離構造を反映するピークであるFirst sharp differaction peak(FSDP)は、分散関係に関与していない。一方、Ni_<67>Zr_<33>ガラスの場合は、音響フォノン的というより光学フォノン的な分散関係を示すことを見い出した。このことは、Ni_<67>Zr_<33>ガラスがSiO_2ガラスのように堅い構造ユニットが存在していないためと考えられる。すなわち、S(Q,E)における分散関係の差異は数原子間距離程度の中距離構造の違いに起因すると考えられる。 また、非晶質物質に普遍的な物性であるS(Q,E)における低エネルギー励起(ポゾンピーク)についても重要な知見を得ることに成功している。SiO_2ガラスではE=4meV付近にボゾンピークが観測されるが、そのピーク位置はQによらずE=4meVで一定であることがわかった。この結果は、ポゾンピークが強く局在したモードであることを裏付けるものである。 本研究で明らかにされた実験事実で、最も特筆すべきなのは、強く局在したモードであるボゾンピークよりも高いエネルギー領域において、明らかな分散関係が見られる点である。Ioffe-Regel則によれば、ポゾンピークに寄与する領域の相関距離よりも短い波長の協同的原子振動は存在しないといわれており、我々の実験事実はこの条件則に全く反するものであり、新たな概念を構築する必要性を促すことになった。非晶質物質におけるフォノンという素励起を広い波数-エネルギー空間において観測することで、非晶質物質の構造の本質を解明する全く新しい糸口をつかむことができたと言える。
|