研究概要 |
平成10年度は,主に短周期アンジュレータ用円偏光磁気回路の設計・製作と磁場測定装置の製作を行った。円偏光用アンジュレータ磁場は,電子が通過するアンジュレータ軸上で螺旋型に変動する磁場である。この磁場を実現するために,鉄心を含まない型(ピュア型)の磁気回路を採用して開発を行った。また本研究で目指す1〜2cmの短周期磁場を実現するには,磁石列間のギャップを非常に小さく(5mm前後)設定して真空槽の壁等を介さず電子に直接磁場を印加しなければならないため,磁気回路自体を真空中に導入できるよう配慮しなければならない。既に我々が開発し実用化した真空封止型X線アンジュレータ(PF-ARに設置)の建設で得た知識を活用して,アンジュレータ磁石(周期数2cm)列の間隔4mmにて最大3500Gaussの磁場(螺旋型磁場として)を発生できる磁気回路を製作することができた。 一方で,短周期磁場の精密かつ高効率の測定方法を確立するため,微少な磁場感受域を持つホールセンサーを用いた磁場測定装置を製作した。さらに,磁場測定を効率的に行うために,フリップコイル型磁場測定装置(アンジュレータ中心軸に沿って設置した長尺コイルを軸のまわりで回転させることでアンジュレータ軸方向の磁場積分値を効率的に求めることができる)の設計・製作を行った。また,このフリップコイル型磁場測定装置は磁場積分値測定の他,ホールセンサー型磁場測定装置の較正にも使用することができる。 平成11年度は,短周期アンジュレータ用円偏光磁気回路の磁場測定・調整法の開発を行った。この時,真空封止型アンジュレータ用に設計・製作した磁気回路を,汚染せずに実行できる磁場測定・調整法を開発した。このために,微少感受域磁場測定装置用の制御・測定プログラムの作成を行うとともに,既存の磁場測定用架台に必要な改造を施し昨年度製作の円偏光磁気回路を取付可能にした後,磁場測定・調整を行った。この時の方針は,螺旋型周期磁場が電子に与えるキック量の周期毎のばらつきをできる限り少なくし(0.2%程度以下),この磁場中で螺旋運動を行う電子の螺旋軸を真直にすることである。本研究によって,1〜2cmの短周期の領域においても円偏光アンジュレータ磁気回路を実現できることが明らかになった。
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