研究概要 |
[1]三瓶山におけるデイサイトマグマは特に塩素に富み,また黒雲母は有機物を多く含み,スラブ融解によって生成された可能性が高い。三瓶山の完新世溶岩ドーム群の古地磁気方位からそれらの形成年代は3700-3800年前と推定された。三瓶山と大山の火砕流堆積物の定置温度が,炭化木片を用いた温度-冷却速度計と熱残留磁化を用いて推定された。[2]自己反転熱残留磁性鉱物(ヘモイルメナイト)が三瓶山と大山の火砕流堆積物中のデイサイト岩片と溶岩中から発見された。[3]火砕流堆積物の定置温度を見積もる目的で,温度既知の条件下で実験的に作成した炭化木片のH/C比を用いて温度-冷却速度計を提案した。この温度計は天然炭化木片のH/C比とそれを含む火砕流堆積物中の岩片の熱残留磁化測定によってクロスチェックされ,有効であるとの結論を得た。[4]堆積岩の関与の程度が大きい島弧火成岩類(Sタイプ火成岩類,HMA,スラブ融解起源と考えられる火成岩類)には地表付近における汚染ではない炭化水素側鎖をもつ高分子有機物が存在することが明らかとなった。マグマの発生時あるいはその上昇過程でマグマ中にトラップされ,固結過程で重合し,高分子化する有機物があることが判明した。[5]珪長質マグマ中とその固結過程での堆積岩起源有機物の実態を明らかにするために,花崗岩質ガラス粉末±黒雲母+水+炭化水素化合物を用いて,5kb,900℃の条件下で数日間加熱,その後,急冷と数日間で常温まで徐冷する実験を行った。この結果は上記の[4]の結論を支持するものであった。[6]石鎚火山-深成複合岩体と熊野酸性岩類を対象として,噴出岩と貫入岩の対応関係から揮発性成分のマグマ溜りや噴火過程での脱ガスやトラップの様式について予察的な研究を行った。
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