研究概要 |
本研究は,付加帯の化学合成群集の内,主に水深500m以浅に生息した化石群集の解析を行ったものである.研究成果の概要を以下に示す. 1)更新統小柴層の化学合成群集を産出する露頭に100mのボーリングを実施した結果,この群集は,層理面に垂直な方向に約40m,水平な方向に約20mの規模で分布することが判明した.コアの一部には,基質が完全に白色の炭酸塩でできている部分,大型二枚貝が破砕されている部分,また,岩相の境界が推定される地層境界の地層の傾斜と斜交している部分が見い出された.この事実は爆発的なメタンの噴出により,地層中の基質が吹き飛ばされたり,地層の一部が礫化していると考えないと説明がつかない.また,コアと周囲の露頭の対比を試みた結果,粒度に基づく岩相区分はほぼ対比できるものの,鍵層となる凝灰岩層は,全く対比できないことが判明した.この理由は,化学合成群集生息域の著しく活発な内生生物活動により凝灰岩層が乱され散逸してしまったことが考えられる. 2)宮崎県の鮮新統高鍋層から発見した陸棚域に生息する化学合成群集の産状を調査した結果,少なくとも厚さ10mで,走向方向に100mの規模で分布していることを確認した.この群集は,走向方向の広がりでは日本最大の化石化学合成群種である. 3)北海道稚内沖で,約1000年前のオウナガイ類と約10000年前のシロウリガイ類を含むコンクリーション岩塊を発見した.また,魚群探知機を使用して発見地点の海底地形調査を行った結果,一部に凹凸の地形を見い出した. 4)北海道の中新統望来層のシロウリガイ類を含む化学合成群集を調査した結果,シロウリガイ類がCalyptogena pacificaであることと産状が2つの層準にまたがることを確認した.
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