研究分担者 |
下林 典正 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70235688)
小畑 正明 京都大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20126486)
北村 雅夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70004489)
清水 以知子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40211966)
林 愛明 静岡大学, 理学部, 助教授 (90283861)
|
研究概要 |
断層に関しては膨大な地質学的記載と個別分野の詳しい研究がある反面,研究に統一した視点と目的意識が乏しかったために,断層の実体が浮き彫りになっていない.本研究の目的は,断層帯の内部構造と断層帯の変形・透水試験を平行させておこない,断層を総合的に研究するひとつのプロトタイプを作ることであった.本科研費を用いて,精密成形研削盤(初年度)と卓上精密旋盤(今年度)を購入して実験室の基盤整備を進めるとともに,断層破砕帯から実験用試料をぬきとるコアラーの自作と野島断層帯の浅所ボーリング掘削(今年度)を実施した.ボーリングは,泥水の代わりに泡を使った新工法でおこない,乱れの少ない断層破砕帯の試料を回収した.また,泥水の透水係数の影響も心配する必要がないので,破砕帯研究に非常に有効である.本研究の成果と課題は以下の通りである. 1.断層帯の透水性構造の決定 断層帯の透水性に関しては詳しい測定が少ない.ガス圧式変形透水試験機を用いて,野島断層・中央構造線・柳ヶ瀬断層の破砕帯の透水係数(N_2gas permeability)を測定し,断層帯の透水性構造と断層の内部構造の比較した.その結果,断層帯は透水性の低い粘土質断層ガウジと流体を比較的通しやすい破砕帯からなることが判明した.同様な測定を,今後,他の断層と高温下に拡張する予定である. 2.断層の高速摩擦と地震の発生過程 高速摩擦試験機を用いて,摩擦熔融とともに断層が強度を失う過程を詳しく調べた.その結果,メルト層の厚さの増加が強度低下をもたらしていること,熔融速度と破砕帯からメルトの流出速度がつりあうと応力がほぼ一定になることが初めて示された.この結果は,地震の発生過程を規定するslipweakening distanceの意味を解く上で新しい視点を提供した.研究を岩水条件下に拡張する予定である.
|