研究概要 |
本研究は,分極移動の現象を高度に利用し,(A)フルラベルした単一の粉末試料での分子の立体構造の決定法,(B)部分ラベルした分子での分子間相対位置の決定法を我々によるSASS法やR2TR法に基づいて確立し,それぞれの応用研究を行うことを目的として行った. (A)については,「1次元重水素交換試料Turning法」(J.Magn.Reson.1999),「RIRによる^<13>C-^<13>C分極移動法」(Solid State Nucl.Magn.Reson.1999,Chem.Phys.Lett.1999),および,「R2TR法を用いた分子全体の3次元構造解析法」(J.Am.Chem.Soc.1999)の開発を行い,固体NMRにより単一の試料を用いて3次元構造を決定する手法を開発した.さらに実際に,この手法を,炭素,窒素を全て^<13>C,^<15>Nで同位体置換したL-グリシルイソロイシンに適用して三次元構造を決定した.これは,固体NMR法で分子全体の3次元構造を決定した初めてのものである(J.Biol.Nucl.Magn.Reson.印刷中). (B)については,(1)9-メチルアントラセンの光による結晶内二量化反応における生成物分布構造(反応が格子欠陥で起こるという説とランダムな格子点で起こるという説がある)を二量体間の分極移動を通じて調べ,反応が格子欠陥で起こると結論した. (Solid State Nucl.Magn.Reson.1998)また,(2)コール酸によるγ-バレロラクトン(VAL)の光学分割機能をVALのメチル基を部分ラベルした試料を作成して,分子間の分極移動を観測することにより検討した.その結果,コール酸中のVALのS体,R体の並び方が一次以上のマルコフ過程に従うことを示した.(分子構造討論会1999,構造有機討論会1999).
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