研究概要 |
0価6族金属カルボニル錯体に末端アルキンを作用させると,η^2-アルキン錯体を形成した後さらに異性化してビニリデン錯体を生成することが知られている。これらの錯体においては,金属部位の電子求引性によりアルキン部位が電子不足になることから,アルキンへの求核攻撃がおこりやすくなることが期待される。我々は,求核部位として分子内にシリルエノ-ルエテ-ルを持つ末端アルキンを基質とし、金属試剤としてペンタカルボニル(テトラヒドロフラン)タングステン(0)(W(CO)_5・THF)を用いて分子内環化反応の検討を行った。その結果触媒量のW(CO)_5・THFのTHF溶液に,プロトン源として水あるいはメタノール2等量存在下室温で反応を行うことにより,末端アルキンに対しシリルエノールエーテルがエンド環化した生成物が収率よく得られた。 またオルト位にアルケニル基とアルキニル基を持つベンゼン誘導体にTHF中,触媒量のW(CO)_5・THF錯体を作用させると,ビニリデン錯体が生成した後,電子環状反応が進行しナフタレン誘導体が収率よく得られることを見出した。オレフィン部位に各種の置換基を持った基質を用いて反応の検討を行ったところ,本反応はアルケニル基の1位に電子供与性基や電子求引性基が置換していても,速やかに進行した。さらに,ヘテロ五員環とエチニル基をオルト位に持つベンゼン誘導体に触媒量のW(CO)_5・THF錯体を作用させても反応が速やかに進行し,対応する含ヘテロ多環性芳香族化合物を収率よく得ることができる。
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