配分額 *注記 |
9,600千円 (直接経費: 9,600千円)
2000年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1999年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1998年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
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研究概要 |
糖質は多くの生命体にとって最も重要なエネルギー源であるばかりでなく、様々な生体機構において重要な働きをしている。近年、X線結晶構造解析等による構造生物学の急速な進歩に伴い、糖質をターゲットにした酵素の多くがその活性中心で金属と糖質の相互作用を利用していることが明らかになりつつある。本研究では、生体機構を模倣した人工的金属多核中心の構築により、特に、アルドース-ケトース異性化反応の開発を目指した。 金属多核中心の設計は、アンカー配位子の設計・選択→単核配糖錯体の合成→二核化配位子を用いた二核あるいは多核配糖錯体への拡張→変換プロセスに必要な反応試剤の導入と人工的プロセスの実現、の順で進めており、アンカー配位子として1,4,7-triazacyclononane(tacn)を用いて研究を行った。tacnと1あるいは2当量のD-glucose(D-Glc)を反応させることにより、N-グリコシド配位子N-D-glucopyranosyl-tacn((D-Glc)-tacn)及びN,N′-bis(D-glucopyranosyl)-tacn((D-Glc)_2-tacn)を合成し、それぞれ種々の遷移金属イオンと反応させることにより、糖質を固定した金属単核ユニット(Sugar-Binding Metal Center)を合成・単離した。錯体の構造決定は種々の分光法及びX線結晶解析により行った。特に、[Zn{(D-Glc)-tacn}(NO_3)_2]と[Zn(XDK)(H_2O)]を反応させることにより、[Zn_3(XDK){(β-D-Glc)-tacn}_2](NO_3)の組成をもつZn(II)三核錯体が得られた。XDKが3個の金属中心を集積した例はこれが初めてで非常に珍しい構造である。また、グルコピラノースが架橋した構造も初めての例である。また、[M{(D-Glc)_2-tacn}Cl]Cl(M=Cu,Zn)と[M(XDK)L_n](M=Zn,L_n=H_2O;M=Cu,Ln=py_2)との反応から[M_3(XDK){(β-D-Glc)_2-tacn}_2]Cl_2(M_3=Zn_3,Zn_2Cu,ZnCu_2,Cu_3)の組成を持つ一連の三核錯体を合成し、種々のスペクトル法及びX線吸収微細構造解析、X線結晶構造解析によりその立体構造を明らかにした。さらに、これら三核錯体と酸あるいは塩基との反応を円二色性スペクトル法及び核磁気共鳴法により追跡し、2位の水酸基で金属二核中心に架橋したグルコースの異性化の可能性について検討を行い、糖質の2位の水酸基が二つの金属に架橋配位することにより、糖質のアノマー炭素が著しく電子不足となることを明らかにした。このような結果は、金属酵素キシロースイソメラーゼの活性中心機能モデルとして注目される。
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