研究概要 |
本研究は1995-1999年に実施された千島列島の生物多様性に関する国際共同学術調査において採集された魚類標本約13,000個体を対象に系統分類学的および生物地理学的に精査し,千島列島に生息する魚類の種多様性の実態を解明する目的で行われた。本研究の結果,以下に示す研究成果を得た。 1.千島列島全域にわたる15島で採集された浅海性魚類を分類・査定した結果,未記載種4種,原記載以来初記録種2種および西部北太平洋初記録種2種を含む5目14科60種を確認した。 2.未記載種4種(Icelinus sp., Microcottus sp., Porocottus 2 spp.)はいずれもカジカ科魚類であり,前2種については新種として命名・記載種ための論文をすでに学会誌に投稿した。 3.千島列島中部で得られたタウエガジ科Alectridium aurantiacumおよびカジカ科Sigmistes smithiを詳細に記載し,西部北太平洋初記録種として学会誌に発表あるいは投稿した。 4.千島列島中部で得られたゲンゲ科Commandorella popoviおよびカジカ科Archaulus biseriatusは原記載以来の初めての記録に当たる希少種であることが判明した。 5.本研究で確認された千島列島の浅海性魚類について列島内での分布パターンおよび周辺海域での出現状況を基に生物地理学的に解析した結果,千島列島のURUP島以東とITRUP島以西で浅海性魚類の種組成が著しく異なること見出し,この間に生物地理学的境界が創成されているとの結論を得た。 6.本研究課題の研究成果をまとめて報告書を作成するとともに,本研究で扱った千島列島産の魚類標本を北海道大学水産学部生物標本館に学術標本として登録し,データ・べース化を図った。
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