研究概要 |
本研究経費の全交付期間中における主な研究成果は以下のとおりである. 1.タリウム系銅酸化物高温超伝導体と同様な擬二元系相図を持つと考えられるビスマス系銅酸化物高温超伝導体の擬二元系相図を高温X線回折その場測定によって作成した.また,同系の準安定新物質の熱的安定性を明らかにした.さらに,ビスマス系銅酸化物高温超伝導体の急冷ガラスの結晶化過程を時分割高温X線回折測定によって明らかにするとともに,結晶化の活性化エネルギーを評価した. 2.タリウム系銅酸化物高温超伝導体の大型単結晶を育成する際に問題となる有毒性と高蒸気圧を克服した縦型電気炉及び密閉雰囲気結晶育成技術の開発に成功した.特に,長時間の育成に耐えうる結晶育成用特殊セルの開発に成功した. 3.タリウム系銅酸化物高温超伝導体,特にタリウムとバリウムを含むタリウム酸素層二層構造の銅酸化物高温超伝導体の大型で結晶性及び超伝導特性に優れた単結晶育成に成功した.さらに,熱処理条件を変化させることによって酸素数を変化させ,目的とするオーバードープ状態の大型良質単結晶を得ることに成功した.現在,他のタリウム系銅酸化物高温超伝導体の大型良質単結晶を育成中である. 4.得られた良質単結晶を用いて,磁束融解点,不可逆磁場,上部臨界磁場を求め,銅酸化物高温超伝導体における磁束の振る舞いを明らかにした.また,磁場中での電気抵抗の振る舞いから,高温超伝導機構の解明につながる知見を得た.現在,走査トンネル顕微鏡測定,光電子分光測定,ドハース・ファンアルフェン効果測定などにより詳細な電子構造や高温超伝導機構の解明のための決定的な実験結果を得るために,国内外の研究者との共同研究を推進している.
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