研究概要 |
本研究では,構造材料表面に存在する擬閉口微視き裂を表面波の非線形性(高調波)を用いて検出し,その大きさを評価する方法を確立することを目的とする.具体的には(1)線集束漏洩表面波センサーを用いた表面微視き裂により励起される高調波の検出、(2)表面波波動伝搬の数値シミュレーションによる高調波振幅に及ぼす微視き裂形状の影響の解析を行った。 本研究において得られた主な知見を以下に要約する。 1.水浸法により,PVDF圧電高分子膜表面波センサーを用いて周波数5MHzのバースト波を擬閉口き裂を含む平面に沿って伝搬させ,表面疲労き裂部で励起された2次高調波(横波成分)を同一センサーで受信し,振幅スペクトルから2次高調波成分を検出することが可能である. 2.ただし,疲労き裂の発生・進展により生じた表面の凹凸も2次高調波に影響を及ぼすので,凹凸の影響を除去することが必要である. 3.現実の疲労き裂面は微細な凹凸を持つので,き裂を閉じさせる0.2MPa以下のわずかな圧縮応力を負荷し高調波振幅を測定することにより,擬閉口き裂の有無を検出できる. 4.接触要素を導入し擬閉口き裂をモデル化した有限要素法による表面波波動伝搬解析により,き裂部での高調波(横波成分)発生を解析できた. 5.自由表面に垂直なき裂に対し,偽斜したき裂ではき裂部を通過した高調波振幅が小さいことが分かった。 6.傾斜したき裂ではき裂面の繰返し打撃によりき裂部が片持梁のように振動するので,局部的に極めて強い高調波が発生する. 7.表面波波長の25%までは表面き裂深さと共に高調波振幅が増大するが,それを越えるとはほとんど変化ない.
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